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ルーズショットのニヒリズム~画の演出3後編

前編 からの続き)

踊るそこから敷衍するとなぜかアニメファンに嫌われがちな実写映画というのは顔のUPが少ないということになるのだろうか。実はその通りで、片岡千恵蔵や石原裕次郎などのキャラクタが全面に立った映画でいくら斜めのポーズのカメラ目線で見得を切ってもアニメほどの顔のUPにはならない。『踊る大走査線』のようなアニメからインスパイアされたような映画の場合、カメラが迂回してキャラクタによっていく演出が実に多く、キャラクタもアニメ的な、チビ、デブ、ノッポ、眼鏡、中年オヤジ的な極端な性格付けがされている。
押井作品が映画的とされるならば、こういったレイアウト的な要因は少なくないだろう。しかしそれは男パターンに限った話で、女パターンは強いて言えばアニメ的ということになるだろう。確かに『アヴァロン』はアニメの方法論で実写を作ったと監督自身述べていたから、強ち的外れではないだろう。
では実写作品ではエレベーターというシチュエーションはどんなレイアウトになるのか。北野映画『ソナチネ』のエレベーターシーン。狭い状況というのが伝わるレイアウトながらも、それぞれの人物は半身は収まっている。この後自決覚悟で乗り込むシーンが待っていることを考えれば、かなり内へ向かう心情のシーンとなるが、それでもここまで引いて収められている。
北野映画の場合、どんな銃撃シーンでもクールに演出されているから引きが多いというだけかもしれないが、北野映画は殆ど男主人公なので、引きでも心理描写として捉えてもこれまでの文脈上合点が行くだろう。押井男パターン作品と北野作品の近似は斯様な点から感じているのだが、俗に思われる印象としては、『3―4×10月』のような元の場所に帰る夢オチのような筋立てが似てるということのようだが、男の行き場のない自決型のニヒリズム、とりわけその描き方、距離感覚の演出が近しいという非常に感覚的な部分のような気がしてならない。
brother 『BROTHER』や『HANABI』で主人公はサングラスをしているが、このサングラスの画的効果は表情が見えにくい点だろう。それこそ敵の雑魚不特定多数のような、グリーンホーネット的なキャラクターならいざしらず、キャラクタの顔のUPを心情とするアニメやタレント性の強い実写映画の主人公ではまずありえない。その点で押井監督はバトーというキャラクタをセレクトしたといっていたが、外殻を描く映画なら表情で多くをわかりやすく語らないキャラクタとして適当だろう。それと似たような意味合いで、押井作品ではロンパリも選択される。
もちろん、キャラクタとその状況を描くレイアウトとして男主人公でもルーズな画が多いのはそうなのだが、これまで述べてきた文脈との違いは、『イノセンス』にしろ『HANABI』にしろ『ソナチネ』にしろ、主人公が相当出ずっぱりなのだ。外殻を描くためには状況のカットが増えると先に書いたが、『P2』のカメラの目線とは違い、『イノセンス』ではフレームには常にバトーが入り込んでいる。バトーが設定上、外殻の側のキャラクタであり、素子的な内在するものを持たない、あるいは抱きつつも完全にそちらの思考へは向かわないから、バトーそのものが外殻であるといういいわけも可能だ。しかし、それではちと詭弁過ぎる。あくまで映画の主人公としてバトーは立っているのだから。そういう点では、『Ghost in the shell』も『イノセンス』も主人公をフレームの中心として描いた映画として同等かもしれない。ただ、お互いのキャラクタの立地点、および到達点(アチラへ向かう/自らが形であることの同定)が違うことで、これまで述べたように描かれ方が全く変わってきてしまう。自己への認識の違いが、情報という不可視的なアチラの一部になるか、軽視されながらもそれそのものとしての圧倒的な存在感のある単なる形のひとつと再認識するかを左右している。『HANABI』『ソナチネ』『BROTHER』も、それこそ『DOLLS』も、どうにもならない単なる世界の一構成要因であるというだけの、事態を起こしたところで、その立地点に帰結する、なんでもないことを巡る映画ではないだろうか。

そんな作品のキャラクタは、状況という風景の中、紛れるようにルーズに佇む。

【初出:04年12月30日発行『notイノセンス?』】

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