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『アヴァロン』雑感

【初出:2001年1月20日】
久々の押井、というか、このところ見たい映画がラッシュで、既に去年に劇場で観た映画の本数に並んでいるという近年稀に見るエライ状況で、文化に触れられてウハウハなのである。なんだか久々に古巣に帰ってきたようで、そのなかに押井が入っているというのがなんとも嬉しいじゃありませんか。
で、今回のアヴァロンですが、前作の攻殻からどうも最先端SFXのトンがった(今日日いわないか)ハリウッドも注目の的、みたいな扱われ方で(宣伝文句もハリウッドでは出来ない映像…みたいな言われ方だしね)、正直、敢えて押井守を巡るムーヴメントから距離を置いていた。その間、過去の作品を見返していたりはしたけど、どうも公開以外のイベントに行ったりのオッカケは憚られたのだ。
でも、注目されることは悪いことじゃないし、どんな文句であれ、ああいう映画が多くの人の目に触れられる機会が増えるということはいいんじゃないかな、なんて無責任かつ好意的に思ってもいた。その中のひとりでも、「こりゃ、いい意味でとんでもないものみちまったな」と思えればいいわけで…。

しかし、商売的な売りって、そういう宣伝文句しかないんだよね。有名アイドルが出てるわけでも美少女アニメでもないし。案の定、人狼の喧騒は何処へ…という客入りだったけど。でもなんで人狼あんなに集客あったんだろう?? でもやっぱり前情報を極力いれない主義としては、アヴァロン、押井映画として楽しめるのかな、という不安は相当あった。まあ、こう思う時点でメディアにおどらされているんだけど。

結果から言えば、見事にその不安は玉砕されました。よかったよかった。と、手放しで称賛できるほど、大絶賛!という気分には、観賞直後、なれなかったのも事実。「お前が心配するなよ」という余計な心配を抱えることになろうとは。それは、「こんなもん全国ロードショーすんのかよ!!?」である。

俺=世間じゃないし、凹凸があるから始めて平均があるんであって、自分を一般だとはおもっていないけれど、でも、にしても、これ、世間的に[楽しい]という要素がないよ。ボクに言わせれば、以上の文脈では、はっきり言って「落ちてない」。


これまでの押井作品でも、一応、世界が収束するというか、真偽は兎も角、可能性としてのある世界の一応の終幕は見せているわけだ。北野映画だって、見せてはないけど、銃声は聞こえるわけだ。つまりはそういうことだ。

映画の快楽というものを映画であることだけにどれだけ見出せるか。トレーニングとかいいたくないけども、でもそういうものを積んでいないと、「なんじゃこりゃー」状態なわけで、「結局あの悪党は死んだの?」みたいな話すら出来ない。ここまでやってくれると痛快なはずなんだけど、自分としても正直戸惑った。始めに述べたように、こういった事態以前の、実にくだらないことに不安を抱えていたのだから。

そんな一般鑑賞者へしょうもない不安を抱くというのも、先日、興味深くも実にくだらない話を聞いたからにほかならない。知人の母親が映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」にいって、実に憤慨して帰ってきたというのだ。泣ける映画らしいし、ボク個人的にも泣けるという文脈ではなく興味を持っているのだが、それはともかく普通の主婦が観て憤慨するとはどういうことかと尋ねてみると、どうもラストがハッピーエンドじゃなかったこと、それに尽きるらしい。

ハッピーか否かの是非は兎も角、新春早々、ブルーにさせるな、ということらしいのだ。これにはあきれるというか、言葉を失ったが、ともかく映画を観るという行為は少なからずの人々にとってそういうものであるらしいし、映画を観てよかった、つまり観賞料金にみあうものであり、そうでないものはつまりは金返せ!であるらしい。この話を聞いて、何も言えないというのはまさにこのことなんだろうな、なんて冷静に思ってしまった。

こんなことがあった矢先だから、アヴァロンが全国ロードショウという事実が恐ろしいのだ。


で、お前は結局どうだったのか、といえば、実はこうして文章をうっている今の方が、感動している。久々に後から来る映画で、朝早かったものだから昼寝をしたのだが、夢に出てきた。自分がゲームに参加しているとかそういうチープな夢(夢とは概ねチープなものだが)ではなくて、映画のカットが次々と、そして延々と、それこそ走馬灯のように脳裏を駆け巡るのだ。善か悪かという話はしたくないが、いうなれば悪夢のようなものだった。全体で観て、演出的な見せ場、全体の文脈からのダイナミズムは正直なかった。だから観て直ぐの感動はなかったように思われる。たまごを割るとか、サブコントロールに鳩がいっぱいとか、少女の街とか、だから遅すぎたといっているんだ、などなど。

でも、でも、これは残る。CGでどうのとか、軍が協力してどうのなど、そういった映像のことではなくて、映画の画(らくごのごみたい)としての、負のパワーとでもいうのかな、メチャメチャ間接的に、背中から迫ってくるようなイメージの連続(=映画)である。非常に稀有で、久々に味わう、映画の特権であるだろう恐ろしくも求めずにいられないものがあった。こういうものが最もリピート率が高い気がする。

これは付合いが永くなりそうだ。この映画と自分の関係、その今後が楽しみだ。


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